「コーチング」と「カウンセリング」。
どちらも“対話による支援”という点では共通していますが、関わる人の専門性や役割には、明確な違いがあります。
最近では、キャリア相談、自己理解、メンタルケアなど、人生の岐路や悩みに向き合う場面で、これら2つの選択肢を目にすることが増えてきました。
「結局、自分はどちらに相談すればいいのか分からない」という声も少なくありません。
もし、この“専門性の違い”をよく知らないまま選んでしまうと、期待したような効果が得られなかったり、場合によってはかえって状態を悪化させてしまうこともあります。
そこで本記事では、以下の5つの観点から、あなたにとって“今必要なサポート”を見極めるためのヒントをお伝えします。
- 目的
- 焦点(タイムライン)
- アプローチと手法
- 専門性・資格
- クライアントの状態と適合性
コーチングとカウンセリングの比較表
以下の表では、「コーチング」と「カウンセリング」を比較しています。まずは全体像をつかんでみましょう。
コーチング:これから進む“未来の可能性”を引き出してくれる
カウンセリング:過去に抱えた“痛みや傷”に向き合い、癒してくれる
| 比較項目 | コーチング | カウンセリング(セラピー) |
|---|---|---|
| 目的 | 目標達成、行動促進、可能性の最大化 | 心の回復、心理的課題の解決、機能の回復 |
| 焦点 (タイムライン) |
現在から未来に向かう (これからどうするか) |
過去と現在に焦点 (なぜそうなったか) |
| アプローチと手法 |
問いかけ・内省・ゴール設定・行動支援 (答えはクライアントの中にある) |
傾聴・感情の整理・原因探究・治療的介入 (心の深層にアプローチ) |
| 専門性・資格 | 資格取得は任意(認定団体のトレーニング・倫理規定が推奨される) | 国家資格や公的資格が必要(臨床心理士、公認心理師など) 臨床実習や監督下での経験が必須 |
| クライアントの状態と適合性 |
精神的に健康な人が対象 自己実現やパフォーマンス向上を目指す |
精神的な不調やトラウマを抱える人が対象 心理的なサポートや治療が必要なケース |
コーチングとカウンセリングの決定的な違い5選
【目的の違い】何のために行うのか?「支援のゴール」がまったく違う

🔹コーチングの目的は「行動」と「成長」に向けた伴走
コーチングが目指すのは、クライアント自身が望む未来を描き、そのために主体的に行動できるようになることです。
たとえば「転職後のキャリアをどう築くか」「よりよい人間関係をどうつくるか」といったテーマに対して、コーチは問いかけやフィードバックを通じて、内面の答えを引き出し、現実の行動につなげるサポートをします。
つまり、コーチングは「今この瞬間から、どう動いていくか?」を重視する、未来志向の支援です。
支援のゴールは、“癒し”ではなく、“変化”や“実現”にあります。
🔹カウンセリングの目的は「心の整理」と「癒し」
カウンセリング(またはセラピー)は、心の痛みや混乱に向き合い、過去の経験や感情を整理しながら、クライアントが内的に回復するプロセスを支えます。
たとえば、トラウマ、人間関係の傷つき、抑うつ、不安など、日常生活や感情面に困難を感じている状態に対して、カウンセラーは安全な場を提供し、丁寧に話を聴きながら、癒しや統合を促していく支援を行います。
そのため、カウンセリングでは「何をするか」よりも、「どう在るか」「どう感じてきたか」に重点が置かれます。
ゴールは、過去と向き合いながら心を整えることにあります。
まとめ:目指すゴールが違えば、選ぶべき支援も変わる
- 「これからどう進んでいきたいか」を明確にしたい人には、コーチングが向いています。
- 「心の傷を癒したい」「感情を整理したい」と感じている人には、カウンセリングが適しています。
自分がいま「何を望んでいるか」や「どこに立っているか」によって、選ぶべきサポートは大きく変わってきます。
まずはこの“目的の違い”を理解することで、自分に合った支援を選ぶ第一歩が踏み出せるはずです。
【時間軸の違い】未来に進むコーチング vs 過去を癒すカウンセリング

🔹コーチングは「未来」に目を向ける支援
コーチングが扱うのは、これからどう生きるか/どんな未来を描いていくかという問いです。
過去の経験には触れることがあっても、それは現在地や価値観を明確にするための手段であり、本質的な関心は“これから”にあります。
たとえば、
- 「理想の働き方を実現するには?」
- 「3年後、どんな自分でいたい?」
といった、未来を軸とした問いかけが中心になります。
コーチは、クライアントの現在地を確認しながら、そこから先のゴールや可能性に向けて、前進するプロセスを伴走します。
そのため、セッションでは「次は何をするか?」「それをどう実行に移すか?」といった行動の設計が重視されます。
🔹カウンセリングは「過去と現在」に焦点を当てる支援
カウンセリングの中心にあるのは、過去の出来事や感情、そして現在の苦しみにどう向き合うかというテーマです。
クライアントが抱える不安や悲しみ、怒りの背景には、多くの場合、過去の経験や繰り返されてきたパターンがあります。
そのため、カウンセラーは丁寧に話を聴きながら、過去にさかのぼり、「何が起きたのか」「そのとき、どう感じていたのか」をともに探っていきます。
このプロセスによって、クライアント自身が自分の物語を語り直すことができるようになり、
やがて、「今ここ」の苦しみから少しずつ解放されていくのです。
🔍まとめ:向かう“時間の方向”が違うから、問いの質も変わる
- コーチングが投げかける問いは、「これからどうしたい?」という未来志向。
- カウンセリングが向き合う問いは、「なぜ、いま苦しいのか?」という過去と現在への洞察。
どちらの問いが、いまのあなたにとって必要なのか。
それを見極めることで、今の悩みにふさわしい支援のかたちが見えてきます。
【関わり方の違い】質問で引き出す? 傾聴で癒す?支援アプローチを比較
🔹コーチングは「問いかけ」で内側の答えを引き出す
コーチングでは、“問い”を中心とした関わりが基本となります。
コーチはアドバイスを与えるのではなく、クライアント自身が内面を探究し、自ら答えにたどり着けるようにサポートします。
たとえば、
- 「それを達成したら、どんな気持ちになりますか?」
- 「今、何が最も大切だと感じていますか?」
といった深い気づきを促す質問を重ねることで、クライアントの中にある“まだ言語化されていない願い”や“行動の動機”が明らかになっていきます。
コーチの関わり方は、意図的な沈黙やリフレクション(振り返り)を含む、双方向的な対話です。
その結果、クライアント自身が「どう進みたいか」を定め、主体的な一歩を踏み出せる状態をつくっていきます。
🔹カウンセリングは「傾聴」によって感情を受け止め、癒す
カウンセリングでは、クライアントが抱えているつらさ・迷い・怒り・悲しみといった感情を、そのままの形で丁寧に受け止めることが重視されます。
カウンセラーは、
- 判断せず
- 遮らず
- アドバイスを急がず
まずは“その人が、その人であること”をそのまま受容する姿勢で耳を傾けます。
この「無条件の受容」によって、クライアントは安心して心の奥に触れられるようになり、やがて自ら癒しや統合のプロセスを歩むことが可能になります。
また、必要に応じて、認知行動療法(CBT)やEMDRなど、心理的な専門技法が用いられることもあります。その際も、基本には「まず聴く」「そこに寄り添う」という姿勢が貫かれています。
🔍まとめ:アプローチの違いは、「聴く目的」と「促す方向」
コーチングとカウンセリングは、どちらも「話を聴く」ことを中心に据えた支援です。
しかし、その“聴く”という行為が目指しているものは、まったく異なります。
コーチングでは、問いかけを通してクライアントの内面にある気づきを引き出し、「これからどうするか」への行動を促すことが目的です。
対話の中で思考が整理され、自分なりの選択肢や意思が見えてくるように構成されています。
一方のカウンセリングでは、クライアントが抱えている感情や苦しみを、評価せずにそのまま受け止めることで、「今ここ」にある痛みと丁寧に向き合い、心の回復を支えることが中心となります。
つまり、コーチングは“未来への一歩”をつくる関わりであり、カウンセリングは“過去と現在を癒す”ための関わりなのです。
【専門性と資格】誰がやるのか?支援者の背景に大きな差
🔹コーチングに国家資格は必要ないが、倫理と訓練は欠かせない
コーチングを行ううえで、特定の国家資格や法的ライセンスは求められていません。
そのため、誰でも「コーチ」と名乗ることはできますが、
実際にプロフェッショナルとして活動しているコーチの多くは、以下のような認定機関で学び、トレーニングを受けています:
- ICF(国際コーチング連盟)
- EMCC(欧州メンタリング&コーチング評議会)
- 日本コーチ協会 など
これらの団体では、倫理規定の順守・傾聴スキルの習得・実践的なセッション練習などが必須であり、
一定の基準を満たすことで認定資格(ACC、PCCなど)が与えられます。
つまり、コーチングは「資格がなくてもできる」反面、どんな背景で活動している人かを見極める視点が、依頼者側に求められる支援だといえます。
🔹カウンセリングには専門学位と臨床経験が求められる
カウンセリング(あるいは心理療法)は、国家資格や公的資格を有する専門職によって提供される支援です。
日本では以下のような資格が代表的です:
- 公認心理師(国家資格)
- 臨床心理士(民間認定資格だが医療・教育現場で広く採用)
- 精神科医(医学的アプローチ)
これらの資格を得るには、心理学系の大学・大学院での修学、実習、スーパービジョン(指導者の下での臨床経験)、試験の合格といった、数年単位の専門訓練が必要です。
加えて、カウンセリングでは精神疾患の兆候を見逃さない判断力や、危機介入の対応能力なども問われるため、国家レベルでの規制と倫理管理が厳しく設定されています。
🔍まとめ:資格の有無ではなく、「目的に合った専門性」が重要
コーチは、未来に向けた行動変容を促す伴走者であり、
カウンセラーは、心の痛みに寄り添い支える治療的な専門家です。
支援者としてのスタンスや訓練の背景がまったく異なるからこそ、
どちらを選ぶかは「安心感」や「信頼性」ではなく、あなたの目的に合った専門性かどうかを基準にすることが大切です。
「この人なら話してみたい」と思えること。
そして、「この人に頼っても大丈夫」と思える根拠があること。
その2つが、あなたの変化や回復を支える大きな土台になるはずです。
【向いている人の違い】今のあなたに必要なのはどっち?

🔹コーチングを検討すべき人の特徴
コーチングが力を発揮するのは、クライアントが精神的には健康な状態にありながら、人生や仕事において“よりよく”を求めているときです。
たとえば、こんな状態にある方に向いています:
- キャリアやライフスタイルを見直したい
- 自分の強みや価値観を明確にしたい
- 新しい目標に向かって踏み出したい
- 思考や行動のクセをアップデートしたい
- 自己肯定感やモチベーションを高めたい
つまり、今すでにある程度の安定を土台にしながら、さらに次のステージへ進みたいと考えている人にとって、コーチングは非常に有効な手段となります。
🔹カウンセリングを検討すべき人の特徴
カウンセリングが必要なのは、感情や心身の状態が不安定になっていたり、日常生活に支障をきたしているようなときです。
以下のような状態に思い当たる方は、まずカウンセリングを検討すべきです:
- 不安や抑うつが続いている
- 過去のトラウマや喪失経験にとらわれている
- 人間関係で強いストレスを感じている
- 原因不明の身体症状がある
- 誰にも話せない悩みを抱えている
こうした状態では、いくら未来を描こうとしても、心の回復が追いつかないまま前に進もうとしてしまうリスクがあります。だからこそ、まずは心を整える“安全な場”としてのカウンセリングが重要になるのです。
🔍まとめ:「今の自分」がどう在るかで、選ぶべき支援が変わる
どちらの支援も、あなたをサポートするための強力なリソースです。
ただし、その入り口と目的が異なるからこそ、選ぶ際には自分の状態と照らし合わせることが必要になります。
- 「今の自分には大きな問題はないけれど、もっと成長したい」→ コーチング
- 「正直、つらさを抱えていて、まずは心を整えたい」→ カウンセリング
もし判断がつかないときは、どちらかの専門家に最初の一歩として相談してみるのもひとつの方法です。
適切な支援につながることで、きっとあなたの人生は、より軽やかに、より確かに動き出していくと信じています。
FAQ
ここからは、よくある疑問にQ&A形式でお答えしていきます。
「コーチングとカウンセリングの違いをもっと深く理解したい」「どちらをどう使えばいいの?」といった声に応えました。
Q1. コーチングとカウンセリング、どちらを先に受けるべき?
A.
迷ったときは、「自分の状態」と「望む変化の方向」に注目するとヒントが見つかります。
感情的なつらさや過去のトラウマに悩んでいる場合は、まずカウンセリングで心の整理から始めるのが安心です。
一方で、明確な目標があり「どう進めばいいか」を考えている段階であれば、コーチングが前進を後押ししてくれます。
不安な場合は、どちらかに相談してみて、必要があれば適切な専門家を紹介してもらうことも可能です。
Q2. コーチングを受けていたら、途中で気持ちが不安定になってきました。カウンセリングに切り替えてもいいですか?
A.
はい、もちろん可能です。
コーチングは未来志向の支援ですが、進めていく中で内面的な葛藤や過去の傷が浮かび上がることもあります。
そうしたときは、心のケアを優先する判断がとても大切です。コーチと率直に状況を共有し、必要であればカウンセラーへの切り替えを検討しましょう。
信頼できるコーチであれば、その判断も尊重し、適切な道筋を一緒に考えてくれるはずです。
Q3. 精神科や心療内科とカウンセリングはどう違うのですか?
A.
精神科や心療内科は医師による診断と投薬治療が行える医療機関です。一方、カウンセリングは主に対話によって心の整理や回復を支援する方法で、薬物療法は行いません。
どちらが必要かは、状態の深刻さや症状の種類によって異なります。
不安が強く日常生活に支障がある場合は、まず医療機関での診察を受け、必要であればカウンセリングと併用するのが安全です。
Q4. コーチングでは具体的なアドバイスはもらえないのですか?
A.
基本的に、コーチングは「答えを与える」のではなく、「問いかけによって自分の答えを導き出す」支援です。
ただし、状況によってはコーチの経験からヒントを提案することもあります。
重要なのは、コーチが一方的に導くのではなく、クライアントの意思を尊重した関わり方をしているかどうかです。
「アドバイスをもらう」のではなく、「自分で選ぶ力を取り戻す」ことを重視するのがコーチングの特徴です。
Q5. オンラインでも効果はありますか?対面との違いは?
A.
はい、オンラインでも十分に効果は期待できます。
実際に、多くのコーチングやカウンセリングの現場でZoomや電話を活用したセッションが一般化しています。
オンラインの利点は、場所を問わずにアクセスできることと、リラックスした自宅環境で話ができることです。
ただし、「直接会って安心感を得たい」「表情をしっかり見たい」といったニーズがある場合は、対面を選ぶのもひとつの方法です。スキルは、誰でも実践できます。
ただし、相手の本音や価値観を引き出すには技術と経験が必要です。
コーチングスキルは、トレーニングや資格取得を通じて磨くことができます。
Q6. コーチングとカウンセリングの違いは何ですか?
A.
コーチングは、クライアントが自分の中にある答えを見つけ、未来に向けた行動を起こすための目標志向型の支援です。
一方、カウンセリングは、過去の経験や現在の心理的な課題に向き合い、心の回復や癒しを目的とする支援です。
また、コーチングには国家資格は不要ですが、カウンセリングでは臨床心理士や公認心理師などの専門資格が必要になります。
目的・時間軸・関わり方・支援者の資格など、両者には複数の明確な違いがあります。
まとめ:あなたに合った支援を、正しく選ぶために
コーチングとカウンセリング──
どちらも、誰かの力を借りて「よりよく生きたい」と願う人にとって、大きな味方となる支援です。
ですがその一方で、それぞれの支援には明確な違いがあります。
- 自分の中にある可能性を引き出し、これからの目標に向かって進みたいなら、コーチング
- 心の傷や感情の整理を通じて、安心感と回復を得たいなら、カウンセリング
選ぶ支援を間違えることは、遠回りや無力感につながることもあるからこそ、
“いまの自分の状態”と“望んでいる未来”に合った支援を選ぶことが、最初の一歩になります。
この記事が、その判断を助ける地図になれば幸いです。
🚩次の一歩に迷ったら…
- まずは無料相談や体験セッションを活用して、信頼できる専門家と話してみる
- 自分の状態が明確でないときは、心理検査やセルフチェックを取り入れてみる
- 両方に関心があるなら、段階的な併用(カウンセリング→コーチング)も視野に入れてみる
支援を求めることは、弱さではなく「自分を大切にする決断」です。
あなたの歩みが、より自由でしなやかなものになりますように。
▼コーチングについて詳しく知りたい方




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